猫たちの聖夜

猫たちの聖夜 (ハヤカワ文庫NV)

猫たちの聖夜 (ハヤカワ文庫NV)

 再読。いや、もう再々読かな?私の好きな本の一つです。最初に読んだのは中学の頃。学校の図書室にあったハードカバー版を、むさぼるように読んだ記憶があります。借りてきた日のうちに読み終わらなくて、でも読みたいもんだから真夜中に親に隠れて、こっそり布団の中で懐中電灯使って読んでたらあっさりばれて叱られたりとか。この本でちょうど習っていた理科のメンデルとエンドウ豆の遺伝の話を覚えたりとか。思い出の残る本でもあります。
 うん、何回読んでも面白い。流石です、この本。
 ジャンル分けをすると推理モノって事になるのかな?ロンドンに引っ越してきた猫のフランシスが主人公で、次々と巻き起こる殺猫事件に挑む話。犯人だってもちろん猫。だけれど初めて読んだ時の中学生の私は、この本の事を微塵も推理モノだとは思いませんでした。だってそれ以上に、その筆遣いが素晴らしすぎるんですよ!猫を熟知した作家による、「これぞ猫!」と言えるような描写とか、ただ推理する事に頼りはしない起伏に富んだストーリーとか。
 恐らく私がこの本を気に入ったのには、私がもともと猫好き(犬も好きだけど)という性格もあるとは思いますが、アリバイとかトリックとかを全く使わない(そりゃそうだ、猫だもの)ストーリーが、「さぁ読者の諸君、犯人に挑戦したまえ」っていう妙な気負いを持っていなかったことだと思うのですよ。だってなんかあの手の宣戦布告、正直めんどいじゃん?
 そういう推理モノの気負いを持たなくて、でも活劇もあるし笑いもあるし、勢いと緊迫感もあるし。中学生のからっぽな頭(今も)でも十分楽しめるっていうのがとても良かったです。
 ものすごい人に勧めて回りたいのだけれど、ちょっとグロ描写があるのよね(^^; 殺猫を猫がやっているから凶器は牙とか爪っていう、刃物に比べてクールじゃない殺害方法(殺害現場)、っていう意味のグロさもあるんだけれど、事件の解決を探るフランシスの夢に出てくる光景が、これまたグログロしい(^^; でもそれさえクリアできる人ならものすごい勧めたいです。めちゃ面白い。
 
 うん、勧めたいからもうちょっと具体的にあらすじを書こう。ネタばれはしないから読んでね。
 主人公の猫フランシスが飼い主の、巨漢でとろい独身40男グスタフと共に新住居に着いてみると、その庭には無惨に殺されている同類の死体があった…土地の地理や住人も分からないまま戸惑うフランシスの前で、彼がほのかな好意を抱いていた雌猫を筆頭に、次々と増えてゆく死体。クールな洞察力と好奇心と情熱と若さ(時々欲情)を総動員して真実へと迫るフランシス…やがて、グスタフが改装中のこの空き家と、周囲の猫たち、とりわけ親友の青髭にもまつわる忌まわしい過去と、未来へと向けた壮大な計画が姿を現し始める…。
 
 だめだ、つくづく文才がない。こんなんじゃ絶対、自分だったら食指が動かないよorz
 うん、面白いから、読んで。