輝く断片
- 作者: シオドア・スタージョン,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/06/11
- メディア: 単行本
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「取り替え子」は最初、かなりわけが分からなかった。でもM君からスタージョンの「裏庭の神様」と同じ系列だと言われてものすごく腑に落ちました。柔らかくて温かくて明るい不思議。あとブッチ可愛い(笑)
「旅する巌」は、ちょっと面白くなかった。もうちょっとなんか…なんかあるんじゃないの?結構長めなんだしさ。この長さでそのオチは、ちょっと…。もっと深くつっこめばもっと面白い背景がありそうなんだけれど、あんまり読み返したくない一品。わざわざ読み返したところで、それだけの対価があるだろうか?
「君微笑めば」は、かなりオチはわかりやすい。でもそれを上回る圧倒的な描写が素晴らしいと思った。こういう、日常にうっすらとSFが入っているのはとても面白いと思う。藤子とかいいよね。あんまりたくさんは読んでないけど。
「マエストロを殺せ」と「ルウェリンの犯罪」は読書会でもいろんな人が言っていたけれど、この本の最高の短編だと思う。特にルウェリンの方が個人的にヒット。なんというか、ここまでこう来たら次はこう来るべきであろうという王道を見事にたどってくれたので、すごくすっきりしました。オチが予想されるのとはまた別次元の話。
で、表題作「輝く断片」。ありがち。そのありがちな話をこれだけ豊かに描けるっていうのは本当にすごいことだなぁと感心しきり。でもちょっと、途中グロい。自宅にある針と糸とで一般人が見まねで手術って…。それからヒロインである女の子が、読んでいくうちに私の中でものすごい変化をしたのが印象的でした。登場当初はものすごい聖女のように見えていたのに、読み進めて行くに従ってどんどんと堕ちた空気に変わっていき、最終的には麻薬に手を出しちゃったスれた小娘。この堕ちっぷりがこの作品の空気をすごく象徴するようで、読んでいてうはぁ〜と思いました。
そんなわけで、スタージョン、面白いです(今頃)。次もスタージョン。